チェンナイのある会社がショートムービーを撮るプロジェクトをスタートさせたのはかなり前のこと。製作側はそのドラマの主役に東洋人(オリエンタルな顔)を据えることを決めた。
(オリエンタルフェイスを探してた理由はマーケットに東南アジアや中国も含めれているからとの事)
プロジェクトは順調に進み、スポンサーが見つかって予算は確保され、すでにスタッフも揃い、スクリプトは完成したにも関わらず、一番重要な主役が最後まで決まっていなかった。この状況でキャスティングチームはチェンナイ中の芸能プロダクションにコンタクトし、その役に相応しい人間を探したという。しかし、チェンナイでカメラ映えする華のあるオリエンタルフェイスを見つけることは非常に難しく、スカウトがうちの大学にまで手を伸ばしだしたのは本当につい最近のこと。
まずスカウトは大学構内でリサーチを始め、
聞き込みを行う中で誰かがスカウトにこういう情報を伝えたらしい。
「この大学に日本人がいる。わたしは連絡先とか詳しく知らないけど、きっと政治学部学部長のDr.Manivannanならその日本人のことよく知ってるわ・・・」
この情報を元にスカウトは政治学部へ向った。
去年、俺はManivannanの授業を取ってたし、個人的にプライベートでも仲良くしてるので俺がどんな人間かを説明する人間としてはベストだったと思う。そして、Manivannanは俺に関して知ってる限りの情報をスカウトに教え、その中には俺の携帯番号も含まれていた。
そして、俺の携帯が鳴った。
「この番号ってSHINの携帯?」
「演技とか興味ない?」
「あなたのこと、少し調べたわ」
「今度、オーディションがあるんだけど出てみない?」
これが生まれて初めてもらったスカウトの電話。
バンコクで盗撮されたことはあるけど、東京に長い間住んでても日本の腐ったスカウトは俺に目もくれなかった。日本人はわかってないね、俺が磨けば輝くダイヤモンドだっていうことを・・・笑 だから、インド人スカウトが俺に白羽の矢を立てたのは至極当然な話で、その点はスバラシイ( ^ω^)
そして、今日がそのオーディションの日だった。
場所はチェンナイのIT総本山であるTidel Parkで、その中にあるオフィスに通された。そのオフィス内の会議室にはすでにカメラが設置されて、上層部のエライさんたちが俺を待っていた。しかも俺が入室した瞬間からハンディも回されていた。オーディションの内容はカメラの前で渡された台本を読むこと、指示に従って動きを付けること。そこで与えられるのは台詞のみで、動きは完全に自由・・・。カメラの前で演技したことない俺にとって、アドリブ要求は無茶振りが過ぎるねorz
数テイク試し、オーディションはこれで終了の空気の中でエライさんの一人が言った。
「ズームのワンショットでカメラ映えするかどうか見てたけどイケルね。台詞回しは練習とリハーサルを重ねればよくなるだろう。君が主役だ!」
ヒャヒャヒャ (゚∀゚)
ついに俺もここまで来たねwww
演技の経験ゼロなのに、インドでスカウトされて主役を演じることになってしまったよ
てか、ほら、やっぱり俺ってカッコイイんじゃん???
自分ではそう思ってたけど、やっと他人が認めてくれた。
そういえば俺がやるのはバイク好きな大学生役だってさwww
改めて人生はどこで何が起きるか分からないから面白い。自分が俳優サンになるとは思ってもみなかったし、今後テレビに出ることはあったとしても、演技者としてその機会を得ることはまず有り得ない。それなのに、インドでスカウトされて、いきなりショートムービーの主役だもんね。いままでいろんな事やってきたから、無駄に経験値とかスキルばっかり高くなっちゃったんだけど、ここに来て俺の肩書きに新たなネタが増える。
『インドで俳優デビュー』
日本人でこのネタ持ってる奴はそういねぇだろ?
見る側から突然演じる側にポジションチェンジだもんね。
でも、どうしよう・・・
これでオファーがバンバン来るようになっちゃったらwww
タミル女子にキャーキャー言われて、普通に大学とか行けなくなったら困っちゃうねwww
それに「まるで織田裕二だね」なんて言われたら一生調子に乗ってしまうよ
やっぱり俺は特別な星の下に生まれた人間だった
( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \